無限ワンアップ・改

さゆゆのメモ箱

7月8月の読書記録

13階段 / 高野和明

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なんかのきっかけであらすじを知って、これ絶対私好きな系の話だろうなって中学生くらいのときからずっと気になってて、読もう読もうと思いながら読んでなくて、図書館行ったら閉架だし、そしたらたまたまブックオフで入手できてようやく読めた。そういえばこれ15年くらい前の本なんだ。
物語は、犯行時の記憶を失った死刑囚の冤罪を晴らすために謎を追う話。伏線ひろいながら読んでたけど何回も裏切られて、ジャンルは多分ミステリなんだけど、真犯人は最後までわからなかった。読みごたえ十分でありながらも、なんだかあっさりしてて救いがない終わりだったけど(あ?これで終わりなん?みたいな)、死刑の是非についてはめちゃ考えさせられた。死刑の意味って何だろうとか、被害者遺族のこと、加害者家族のこも、そして特に死刑を執行する刑務官の立場や実際の執行についての描写がめちゃ切実で重くて読んでてつらいけどグングン読んじゃって、でもこういう現実は今うちらが生きてる世界に、現代の、日本に、今まさに、確実に存在していて、関わらざるをえない職業の人がいて、執行されて死んでいく人がいる。なんか知らんけど私は死刑に触れる物語や本に縁があってちょいちょい読んでたから過去にあった冤罪とか死刑の執行方法とかは知ってたけど、今の日本、死刑がめちゃクローズドな環境で執行されてて、いつ執行されたかも事後報告だし。死刑だけじゃない、刑務所もクローズド、囚人もだけどそれに関わってる職業の人たちもすごくアンダーグラウンドなイメージ、あと裁判員制度とかの話にもなってくるけどそれもすごくクローズド。なんかそういうことをいろいろ考えてしまった。死刑と冤罪の本は森達也さんの本を気合い入れて1冊読みたい。

 

■ばかもの / 絲山秋子

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アル中の話だ、とTwitterで紹介されてるのを見かけて読んでみたいと思い、図書館で借りてきたはいいものの、めちゃ面白い話なんだけど私自身がこれ読んでる時まさにアル中気味で、というかハッキリ言って酒めちゃ飲みながら読んでて、本当にクズだなぁと思うんだけどそれで、読んでる最中はすごい心を動かされた気がするんだけど今内容を全然思い出せないので再読案件です。アル中の描写、怖かったし、読んでてつらかった記憶はある。でも読みながら、怖いなって思いながら、飲んでた。結局タイトルの「ばかもの」は私のことでした。

 

阪急電車 / 有川浩

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これも酒飲んで読んでたからあんま覚えてない。本当にクズだな。なんか老若男女が登場した気がする。読後の「読書メーター」(読み終わったらすぐつけてる読書記録アプリ。いつも感想とか軽く書き残しとく)によると、「恋愛パートにキュンキュンした」と書いてるんだけど、内容の具体的なエピソードの記憶がやっぱりあんまないよね。ちなみに読んだ理由は、ヒット作っぽいから。これも再読案件行きです。

 

■連続殺人鬼カエル男 / 中山七里

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「どんでん返し 小説」でググったらおすすめリストによく名前が挙がってたから読んだ。いつかの年の「このミステリーがすごい大賞」の最終候補?か何からしい。もう、とにかくグロい、痛々しい。猟奇的だ。「人がバンバン死んで最後にどんでん返しがある系」のジャンルの本が自分は好きなんだと思っていたけどちょっとそうじゃないのかもと思わされた、だって実際これ読んでて結構きつかったもん。不快だった。なんか、登場人物に「裏切られる」瞬間が何回かあるんだけど、人が、てのひらを返したように別の人格になるのが全く怖すぎて仕方ない。ヘタな心霊映像よりずっと怖い。本当に怖いのはオバケでも恐竜でもなく、人間の心の奥底にひそんでいる狂気なんだという事実を嫌ってほど思い知らされた。だから、この手の物語はしばらく控えようかなーと思った!
あと、主人公、これでもかってくらい、いろんな人にフルボッコにされる。暴徒化した市民とか黒幕とかに。壮絶な戦闘シーンが描かれる。暴力が。めちゃ痛そうだし出血とか骨とかヤバイ、読んでてこっちが痛くなるくらい。たぶん普通に考えて作中で3回くらい死んでるんじゃねって思うくらいの濃度でフルボッコにされる。でも主人公だから最後まで死なないんだよね〜(ネタバレごめん)。すごいよ。ルフィかよ。週刊少年ジャンプかよ。

 

■ほかならぬ人へ / 白石一文

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直木賞受賞作だからわりと期待して読んだけど。だからさ〜〜人が死ぬ恋愛小説はずるいんだって〜〜、だからさ〜〜、と思った、簡潔に述べると。私は自分の愛が重いか軽いかすらわからないし、愛した人に裏切られたこともなくて、早い話が人生の経験めちゃ浅いから共感はできない。でも、好きだった人と不本意にお別れしたときの、失ったときの、果てしなく悲しい気持ちはこの本読んでてなんとなく想像できた。この本から得るものはそれだけでいいかなと思った。失うこと考えると、何かを所持しておくことが怖くなった。でもそういうつらいことも乗り越えて生きてくしかないんだよなあ。

 

■生きてるだけで、愛。 / 本谷有希子

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再読本。手放そうかと思ってたけど、この本やっぱり手放せないやと思い直した。この本、私にとって大切だわ。今を生きるすべての「メンヘラ」と呼ばれる女性はこれを読むべきだよ、特に布団から動けない系のベクトルでメンヘラの。私はこの主人公に痛いくらい共感してしまう。「痛いほどわかる」なんて、本読んでて思うことあんまないからこれはすごいよ。まず薄いからすぐに読めちゃうのがいい。あとすごい砕けた文章が私には心地よくてスラスラ読める。のめり込んじゃう。どうしてうまくいかないんだろうっていう生きづらさ、息苦しさ。「今度こそ大丈夫かも」って思ったのに自らの手でダメにしてしまう自分。痛いほどわかる。最後に光が見えるかどうかはわからんけど、この本が世の中に発表されていて流通していること、芥川賞のノミネート作品になったということと、これを読んだ人が私以外にもきっとこの世界にいること、それらのことが救い。存在してるだけで救いになる本だ。そんな本あんまないよ。やっぱ手放せない。

 

■教団X / 中村文則

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なんか話題になってるらしいから読んだ。うん、話題になってるらしくて。だけど結論からいうと、はっきり言って私は社会や政治や歴史のことを知らなすぎるせいで(=きっと私より歳上の人たちにとって「常識」とされているであろうそういったものたちを知らなすぎて)、だから読んでて「?」ってなる部分がたくさんあった。主にカルト宗教の教団を中心に物語が広がっていくんだけど、話題がいろんなところに及んでて、まあ本筋ではなく枝の部分なんだけど。いや、本筋なのかな……それすらもわからん。ストーリーを追うのでいっぱいいっぱい。キーワードは宗教、神、運命、国家、政治、などかな。あと靖国神社とか東京裁判とか。ああこの人社会学やってた(る)んだなあと思った。でも宇宙とか原子とかの理系な話もたっくさん出てくる。それは巻末の参考文献の一覧みたらなるほどね〜これ書くために勉強されたんかなぁってなる。
芸術表現っていうものはいろんな方法や形式があるけど、ジャンル問わず「好きか嫌いかの好みは置いといてとりあえずヤベエ」みたいに圧倒されるものってあって(「これは私好きか嫌いかで言ったら正直嫌いだけどなんか知らんけどめちゃ濃かったわ〜」みたいなことあるやんそれよ)、この本がそれだった。文学の力ってこういうことなのだろうか……って漠然と思った。
読後、ネットでレビューをみてみたらやっぱ賛否あるみたいだ。ボロカスに書いてる人も少なくなかった。エロ描写わりとアレだし、女の人の扱いもアレだし。でも売れてるという結果は確かにあって、数字も出てる。本ってまず読まれなきゃ、出会わなきゃ、評価も何も始まらない。そう考えると、前提として「売れてる」って事実は単純にすごいんだよなあとか思ったりした。読んでみたら、とうてい「売れる!」とは考えられない内容だけど。
ネットで作者のインタビューも漁ってみた(私は作品に興味をもったら同時に作者にも興味を持ってしまうタイプだ)。ご本人は「自分は純文学作家だ」と強く主張してらっしゃるようで、純文学っていう枠の中はめちゃ自由なのかもなー!と思った。
過去にこの人の短編集「A」を読んだけど、3つのボールが部屋で跳ねてるだけの話とかあったから(意味わからんくない?)、この作者の本はきっと私には早すぎるんだ……と思ってた。でもこの本読んで、「歩み寄りたいな、わかりたいな」と思った。なんでだろう?不思議ね

 

■第2図書係補佐 / 又吉直樹

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再読本。めちゃ「いい本」だと思う。内容は、ピース又吉の読書エッセイ。といっても、主に又吉の過去の体験や考えが4ページほど書かれて最後の数行でその文章にまつわる本を紹介するよー×25回、みたいな感じ、だからどこ開いても読める。紹介される本にも興味がわく。私が読んだ本も何冊かあって「おお」と思った。あとこの人芸人だからかやっぱり文章の内容が面白いんだよなあ。
だけどだけど、それより何より、これ読んだら絶対又吉のこと好きになっちゃうってことが重要だ。いや、読んだ結果やっぱり「コイツ芸人のくせに、ただのナードやん」て思う人もいるかもしれない。でも私は「ピース又吉」をそんなに知らずにこの本を読んで、彼のことめちゃ好きになってしまった。好印象でしかないよ。太宰に心酔してること、心に闇を抱えてるであろうこと、「情けない側」の人間であろうこと、そして何より、本が好きなことがめちゃ伝わってくるもん。芸人なのにこんなに陰のある人いるんだ、って又吉のこと身近に感じた。あと読書量すごそう。
この本は「火花」が出る何年か前に出ていて、私は「火花」芥川賞受賞後にこの本を見かけて読んだ。又吉の本やんけーって。その結果「火花」めちゃ読みたくなってる。この人、一体どんな小説書くんやろ!?って。あとこの本で又吉が紹介してる本ももれなく読みたくなる。
実は前述の「教団X」は又吉が絶賛してたから読んだっていうのもある。又吉は中村文則氏の大ファンみたいだ。巻末の対談も面白かった。

 

■架空の球を追う / 森絵都

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再読本。日常の中で苦笑いしちゃうシーンを切り取った掌編集。パパッと読めるからいい(パパッと読めるかどうかは私にとってかなり重要)。森絵都がふざけてる作品が好きで、これの中だと「ハチの巣退治」。あと森絵都はなんかグローバルなイメージがある、日本だけが舞台じゃないし日本人だけが登場人物じゃない。

 

■植物図鑑 / 有川浩

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主人公のOLはある日家の前で行き倒れていたイケメンを拾って、同棲生活を始めるんだけど、そのイケメンは主夫で植物オタクで、2人で野草を採りに行っては晩ごはんに料理して食べさせてくれる。という夢のような内容。装丁はカワイイし、登場する野草のカラー写真とか載ってて楽しい。
ただ、完全にフィクションと割りきって楽しまねばならない。こんなハイスペック男子がいきなり現れて同棲なんてあるわけねーんだよ!!!イケメンで、家事できて、優しくて、理性的で、お金のことも考えてくれて、草食系と見せかけて一枚皮めくると肉食系で…… って女子の理想が服着て歩いてるような彼。好きにならないわけがない。
前半は野草採ってしばいて食べてるのの繰り返しなんだけど、徐々に増えてくる恋愛の描写は糖分多め。多めというかめちゃ多い。ハーレクインかよ。めちゃ甘い。幸せでスイート。ゲロ甘。だがそれがいい。なぜならフィクションだから。フィクションの中でくらい夢見てもいいやろ。ということで思いっきり浸りました。読後まず書いた感想「あー、キュンキュンした!」だった。