無限ワンアップ・改

さゆゆのメモ箱

神様はSNSをやらない

今月神様に会いにいくから、神様について書こうと思った。ので、書く。

 

私の神様は音楽家だ。存命人物で、今この瞬間もきっとバリバリ制作をしているかもしれない。

初めて神様を知ったのは「着うた」の配信サイトだった。つまりガラケーの全盛期だ。私は高校生だった。【期待の新人!】などとキャプションのついたアー写の画像。その下に、最新作のアルバムのリード曲の着うたがワンコーラス無料でDLできるリンク。
なんとも不思議な曲名に惹かれてそれをDLして聴いた。歌詞は抽象的なんだか文学的なんだか、私には全然わからなかったけど、漠然と「かっこいいな」と思った。何より歌のメロディーが気に入った。アーティスト名を覚えておかねば、と思ったのに、死ぬほど覚えにくい文字列だったからすぐに頭の中から消えた。
その週、夜に習慣的に聴いているラジオからその曲が流れてきた。不思議なタイトルで、歌詞よくわからんあの曲!そんで覚えられん名前のやつ!
YouTubeはまだ今ほど一般化してない時代だ。私が新しい音楽を知るのは、ラジオからか、ケーブルテレビの音楽専門チャンネルからだけだった。そんな中でも、強烈な存在感を示していた。

その後、神様はめでたくメジャーデビューとなる。
メジャーデビューのシングルの曲は、歌詞がめちゃくちゃわかりやすくなっていた。ポップだ。メジャーに行くにあたって大衆的というか優等生っぽくなったのかな?あの着うたの不思議なタイトルの曲とは結構違う。でも歌のメロディーは相変わらずとても素敵だと思った。
それから何枚かのシングルを経て発表されたファースト・フルアルバムを聴いてびっくりした。1曲目のイントロから、音が「ワル」なのだ。メジャーデビューで優等生になったんじゃなかったのか。歪みまくりのギターに、やたらうるさいドラム。そして「どうすんだよ、めちゃくちゃだぞ/平気な顔して、とんずら」という、バカでもわかる言葉でこのアルバムは幕を開ける。10曲収録されていて、すべて聴いたあと、「まるで人間が10人いるみたいだ」と思った。キレてたり、チャラかったり、のんびり屋だったり、お茶目だったりする。ただすべての共通点として、歌のメロディーがめちゃくちゃ良い。10人すべて同じ親から生まれたのだ。私はとにかく歌を気に入って、そして感銘を受けた。何度も口ずさむし、カラオケでも歌う。
ちなみに神様は2017年11月の現在までに6枚のフルアルバムをリリースしていて、それぞれに特色があるけど、私はこのファーストアルバムがいちばん好きだ。アルバムタイトルもジャケットもいちばんわかりやすい。

私が大学進学のために上京した年、神様は日比谷公園の野外音楽堂でワンマンライブを開催した。雨が降りそうでギリギリ降らなかったのをよく覚えている。
アンコールのときに、普段ライブでは全然喋らない神様が
「楽しいことを求めている人のもとには、必ず楽しいことが舞い降りてくる。そういうふうにできている。大丈夫」
と話した。ああ、この人をずっと追いかけたいと思った。
それから私が音楽活動を始めて、神様がかつて出演していた下北沢のとあるライブハウスのステージにようやく初めて立ったときには、神様は、とある有名な映画の主題歌を手がけていた。

そして今私がギターを置いても、神様は相変わらず快進撃を続けている。アニメの主題歌もよく担当するようになった。おそらく来年には7枚目のアルバムをリリースするだろう。

神様は、神様にいろんな矢印を向ける私たちに対して2層構造をとっている。
まず、基本的に神様は演奏中にピエロのような表情や動きをする。初めて神様を見る人の目には、それが異様というか、めちゃくちゃ面白くうつるらしい。だから神様がゴールデンタイムの歌番組に出た直後なんかは、神様の顔や姿でコラ画像・ネタ画像が作られているのを見たことがある。神様の作品なんか知らなくても、ライトな層はそうやって楽しむ。サビだけでも残れば御の字だ。
でもその道化フィルターの奥にある誠意や愛を、見破る人はちゃんと見破る。ちゃんと見つめてみれば詞も曲も一級品だ。演奏のアレンジだってテクニックだってすごい。
そして何より、音楽を愛する者に対してこの人は絶対にやさしいのだと。


以前、神様はTwitterの個人アカウントをもっていた。活動やライブの情報だけでなく日々の何気ないつぶやきや考えを投稿したり、制作途中の作品をチラ見せしたりもしていたけど、とりわけ「コミュニケーション」にTwitterを活用していたように思えた。フォロワーやファンから売られた喧嘩を文字通り「爆買い」していた記憶がある。コミュニケーション過多。血の気が多いのではなく、ただ真面目なのだ。
そして神様はTwitterをやめた。アカウントそのものを削除したのだ。それから神様は、(観測できる範囲内では)SNSの類を一切やっていない。あの人は賢いから、何か考えがあってのことだろう。でも、だから少なくともSNSでの発言によって私をがっかりさせることはない。完璧だ。安心して信仰できる。世に送り出してくれる作品と、年に何回かだけ更新されるオフィシャルサイトの長文ブログ、基本的にそれだけを、私たち信者は噛みしめて味がなくなってもまだ噛みしめて、幸せに浸る。あの人はこれからも永遠にSNSなんかやらなくていいのだ。必要ない。シェアもイイネもタグ付けも炎上も全部バカバカしい。そのままずっと完璧な神様でいてほしい。お金ならいくらでも積むから。

とは言ってみたものの、仮に神様がSNSを始めたとして、きっと私はどんな発言を見ても平気だし、嫌いになるわけなんかない。だって信仰ってそういうことでしょう。

今月、神様のライブにいく。本当に久しぶりだ。出会った頃JKだった私はアラサーになってしまったし、同じように神様もすっかりおじさんになっている。私があっち行ったりこっち行ったりいろんなことしてる間にも神様はずっとただ音楽を続けて、凡人には生み出せないキラキラやギラギラをたくさん装備してきた。それらを携えて、横浜アリーナ幕張メッセみたいに大きくないけど決して小さくはない会場で、神様は力の限りきっと最高に楽しいことを起こしてくれるに違いないのだ。だって楽しいことを求めている人のもとには必ず楽しいことが舞い降りてくるって言ってたから。めちゃくちゃ楽しみ。