無限ワンアップ・改

さゆゆのメモ箱

憂鬱

手術室へとガラガラガラガラ走る、わたしの横たわるストレッチャーが。片山さん、大丈夫ですかぁ、片山さぁん。聞こえますか。聞こえません。聞こえねーよ。なんでみんなマトモな顔で暮らしてるんだろうというハテナマークに苛まれる。うちらは、いつか必ず死ぬとわかっていながら、それが避けられないこととわかっていながら、どうして、うちらは発狂せずに正気で生きていられるのだろう。むしろ生きていることのほうが不自然なのだと気づいた瞬間にすべての常識が気持ち悪くなる。世界の全部が裏返る感覚。生きているということは、もしかして、重力に抗うのと同じくらい不自然なことなんじゃないか? 片山さぁん、片山さん、聞こえますかぁ。誰だってあるさ、血のついたティッシュをゴミ箱の奥底に埋め隠した夜が。いつからか手の施しようがない闇を腹の中に飼っておりそいつがたまに顔を出す。憂鬱とは、特別なものではなく、平熱と地続きの悪夢なのだ。入口の目印がない悪夢。地上にいる地下鉄が少しずつ地下に潜るように、ゆるやかに憂鬱へとグラデーションしていつのまにか憂鬱に取り囲まれてしまう。生まれた瞬間から、世界は、わたしorわたし以外 のどちらかなのだった。だれとなにをシェアしようとも、わたしorわたし以外のどちらかなのだった。閉店ガラガラ、わたし以外へと続くすべてのシャッターをおろして、世界はわたしだけになる。時計の針を止めていつまでもいつまでもその中でボーッとしていたい。あー。狂っているよねこんな世界は。SNSのアカウントを切り替えるくらい手軽に世界線を切り替えたい人生でした。片山さん、聞こえますか、聞こえますか片山さん、聞こえますかぁ…………ピーーーーーー