無限ワンアップ・改

さゆゆのメモ箱

わたしの由来

残念ながら、おまえの名前に特別な意味はないよ。夢とか未来とか、そういうポップなのはないね。がっかりしたか。面白いこと言えなくて申し訳ないね。たまたま、座敷の床間の、掛け軸に書いてあった中国の字と、あと画数で決めたんだ。何画って、そんなもの忘れたよ。そりゃ大吉だよ。しかし、この先誰かと結婚したら名前の画数なんて変わってしまうけどね。申し訳ないね。…カタヤマという苗字は全部Aの発音だから、名前の1文字目もAの音にしようというのは決めてたよ。パッとしてるからね。その証拠におまえの兄弟みんな、ア段の名前だろう。おまえに限って言えば、サから始まる名前は音楽や芸術の才能に恵まれるらしい。よかったな。それに、Sの音だ。わからんか、さしすせそのことだよ。柔らかくてやさしい感じがするだろう。まあ、後付けだよ。あとは、なんといっても、絶対に読める字さ。おまえはこの名前を書き違えられても読み違えられたことは今まで1回もないだろう。感謝しなさい。あとは…………何もないね。書ける話は。このくらいだね。なんだ、がっかりしてるな。夢とか未来とかそんなネタが欲しかったかい。恥ずかしいか。そうか。そこまでがっかりされたらこちらとしても申し訳ないね。だけど、名前ばっかり頭デッカチで中身がカラッポの人間になったら、格好悪いだろう。…わからんか。いつか必ずわかる日がくるよ。とにかく、そんなばかばかしい宿題はフィクションでいいかげんに埋めておけばいい。フィクション、おとぎばなしのことだよ。明日きっとクラスの全員がこのプリントにおとぎばなしを書いてくる。わかったか。わかったらお祈りをして早く寝なさい。