無限ワンアップ・改

さゆゆのメモ箱

就職したい(第2話)

そもそも、なぜ然るべきタイミングで就職しなかったのかというと、しなかったのではなくできなかったのだ。

今の日本だと、俗にいう【就活】は大学3~4年生の時期におこなう。その頃私は何をしていたかというと、大学のサークル活動に明け暮れていた。落第生の典型である。また、本格的にメンタルの不調が出始めたのもこの時期だった。鬱だの不眠だの、列をなしてやってくる。がんばっているつもりなのに、からまわりする。なぜか思うように成果が出ない。というか、みんなが当たり前にできていること(食事・清潔・睡眠。通学・通勤など)が私にはなぜかできなかった。バイトと音楽活動の2つはかろうじて続いていたから、一見すると社会的には大丈夫っぽい、というのもまずかったのかもしれない。その2つ以外は何もかもブッ壊れていたのだから。

それからの【なぜか暮らしがうまくいかない】日々は、丸4年間続いた。4年が過ぎたとき、もう学業に対する執着心は消えていた。大学の学務課に退学届を提出して、下宿のアパートを引き払って、富山の実家に帰った。私は26歳になっていた。

その頃の私は、だれがどう見ても明らかに大学卒業が無理な状態だった。学業どころではなかったし、いよいよ学業以外の部分も破綻し始めていた。それこそアルコール依存のはじまりもこの頃で、毎日ストロングゼロをブチ決めて朝も夜も眠っていた。もっと早く中退すればよかったのだが、そうできなかったのは、心のどこかで「せっかく入学できたのに卒業しないのは勿体ない」と思っていたからだ。実際、学費を出してくれた両親にもそう言われていた。そもそも私は大学受験をメチャクチャがんばって進学&上京したタイプだったし、入学した当時は卒業して就職する未来を当たり前に思い描いていた。今こうして同級生のみんなから遅れをとってしまっても、せめてこのあと就活をするなら【大卒】の学歴はあったほうが絶対良いとか、そういうことを考えていた。それでなかなか中退に踏み切れなかった。まわりの人も卒業を応援してくれていて、頑張ります頑張りますといろんなところで吹聴してまわっていた。焦っていた。

あと私は、プライドが高かった。恥ずかしいけど、プライドのかたまりだった。プライドが服着て歩いてるようなものだった。

 

 

第3話につづく