1009 秋に
この気持ちは何だろう、この気持ちは。
金木犀のにおいが鼻を通って、心をエモくする。
この気持ちは何だろう、この気持ちは。
あたしのつまさきから喉から舌から指先まで、意味のない言葉になって溢れ出る、この気持ちは何だろう。
キンモクセイが年に一度の秋を生きている。
喜びだ、いや悲しみでもある。
すごくわかる、いややっぱよくわからない。
憧れる、でも逆に軽蔑する。
楽しい、と同時に、退屈で仕方ないよ。
冷たい空気が 否が応でも終わりのことを考えさせる。
あたしの愛はあたしの中でうずまき始めて、今まさに行き場を探している。
この気持ちは何だろう、この気持ちは。
いつかあの空の青にさわれるかもしれない。
まだ会ったことのないすべての人と会えるかもしれない。
明日と明後日が一度にくるかもしれない。
新しい自分がほしくてたまらない。そのくせ今の名前を心から愛おしく思う。
まっすぐな国道をどこまでも走ってゆきたい。そのくせこの駐輪場でずっとスマホを触っていたい。
溢れ出る言葉になってこみあげる、この気持ちは何だろう。